運輸安全マネジメントは大体の事業所で、自社ホームページや事務所内に様式を貼り出していますよね。
しかし、貸切バス業者は更新許可の際に運輸安全マネジメント評価が必要になるケースもあるため馴染みが深いですが、貨物の中小企業においてはほとんど運輸安全マネジメント評価について聞かないのではないでしょうか。
国交省では「運輸安全マネジメント評価」として複数名による運輸安全調査官で構成される評価員が2日間にわたって事業者の安全管理体制を評価・支援する施策を行っています。
この運輸安全マネジメント評価を受けることによって、自社の安全管理体制が明確に構築でき、評価報告書としてまとめられるので、自社の安全マネジメント構築を重視したい場合や、インセンティブとしてGマークの加点要素にもできます。
そもそも運輸安全マネジメント制度はなぜ始まった?
2005年、兵庫県尼崎市で発生したJR西日本の福知山線脱線事故によって、107名が死亡、562名がするという大惨事になりました。
原因はヒューマンエラーが要因として挙げられ、輸送の安全を確保するための安全管理体制の構築を図ることとし、国がその安全管理体制を評価する制度ができました。
運輸安全マネジメント評価の対象になる業種は?
運輸安全マネジメント評価の対象となるのは貨物、旅客、海運、航空、鉄道と、運輸に関する分野すべてが対象となります。
福知山脱線事故が起因のひとつですが、鉄道に限らず運輸に関する事業者がすべて含まれています。
なかでも鉄道事業者はもちろんのこと、バス事業者も人命を多く輸送するため、運輸安全マネジメント評価を積極的に受けています。
貨物事業者については、運輸安全マネジメント評価を受けている数が旅客に比べるとかなり少なくなっています
安全管理規定を作成、届け出なければならない事業者は?
運輸安全一括法によって、運輸事業者に対して義務付けられた規程になります。
この規程の内容は大きく次の4つを記載する必要があります。
- 輸送の安全を確保するための事業運営方針について
- 輸送の安全を確保するための事業の実施・管理体制について
- 輸送の安全を確保するための事業の実施・管理方法について
- 安全統括管理者の選任、解任に関する事項について
この安全管理規定は業種、規模によって作成して届け出ることが義務になります。
事業形態 | 安全管理規定の義務事業者 |
鉄道事業者 | 全事業者 |
貸切バス | 全事業者 |
乗合バス(貸切委託運行許可あり) | 全事業者 |
乗合バス(上記以外) | 200両以上保有事業者 |
特定旅客 | 200両以上保有事業者 |
ハイヤー・タクシー | 200両以上保有事業者 |
貨物トラック | 200両以上保有事業者(被けん引除く) |
海運 | 全事業者 |
航空 | 全事業者 |
運輸安全マネジメント評価はどんな流れで行われるの?
運輸安全マネジメント評価の大まかな流れとしては
- 評価員を交えたミーティング
- 事業主、安全統括管理者に対するインタビュー
- 記録の確認
- 評価担当者による打ち合わせ
- 最終ミーティング
- 評価報告書の作成
というものになり、「評価」とはされているものの、国の評価員による助言・支援が強い側面を持っています。
主に運輸安全マネジメント評価についての説明や、事業者のトップが安全に対してどのような方針や取組を行っているか等のミーティングを行います。
その後、書面による活動記録や安全管理体制の構築等の手順書を確認していき、最後に評価報告書を交付されます。
運輸安全マネジメント評価報告書とは?
運輸安全マネジメント評価が終了すると、その評価内容をまとめたものを運輸安全マネジメント評価終了とともに交付されます。
主に
- 評価について
- 助言
- 今後の取組について
の報告があり、自社の取組を客観的に知ることができるため、今後の改善などに役立てることができます。
自社内だけで取組を行っていると、自社で蓄積された経験から独自のルールを取り入れていくことになりますが、第3者からの視点で見た評価を書面化して見ることができるので、改善もしやすくなります。
運輸安全マネジメント評価を受けると得られるメリットは?
運輸安全マネジメント評価を受けた場合、貨物においてはグリーン経営認証、ISO等を取得していない場合は、評価を受けたのが2年以内であればGマークの加点要素になります。
また、貸切バス事業者については、更新許可の際に条件によって運輸安全マネジメント評価を受けていることで許可が通ることもあります。
運輸安全マネジメントについては国交省やNASVAが認定セミナーを頻繁に開催しており、貸切バスについては認定セミナーを受講することで安全性評価認定制度の加点要素となります。
運輸安全マネジメント評価のまとめ
運輸安全マネジメント評価を利用する目的は、自社の事故防止体制を客観視して改善につなげていくことでしょう。
運送会社にとって事故のリスクは常につきまとうとともに、一度重大な事故を起こせば事業自体の継続が難しくなります。
ISOと比較されることもありますが、コストを考えると運輸安全マネジメント評価を利用してマネジメントシステムを構築していくほうが断然得です。
国交省では運輸安全取組事例集を公表していますし、認定セミナーも頻繁に開催しているため、まずは少しずつ安全マネジメント体制を取り入れて、表面だけの安全対策から一歩進んでみると良いでしょう。