ドライバーに対する安全教育について、法定で定められている安全12項目がありますが、そのうちの1項目に「危険物を運搬する場合に留意すべき事項」というものがありますよね?
そもそもうちは危険物を運んでいない!という事業者もあると思いますが、パッと思い浮かぶガソリンを運ぶようなタンクローリーのほか、毒物や劇物、高圧ガス、火薬類など、意外と危険物を輸送しているトラックは多いです。
街中を見ていると、「危」の文字が書かれた黒い看板を車両の前後に付けたトラックを見かけますよね。
他にも「高圧ガス」の看板を付けたタンクローリーなんかも見かけると思います。
これらの危険・有害物質を輸送する場合には、一般貨物事業に関する法令のほかに、高圧ガス保安法や消防法などの法令が非常に重要になってきます。
危険物を輸送する場合、「移送」と「運搬」がある。
じつは消防法上においては、「移送」と「運搬」で呼び方が分かれていて、それぞれについて規制の内容が変わってきます。
どういうことかと言うと、タンクローリーはそもそも「移動タンク貯蔵所」という分類になっていて、動くことができる貯蔵タンクというイメージで、指定数量以上の場合に、タンクの厚さや構造等について規制を受けます。
たとえばガソリンを移送する場合、指定数量が200ℓ未満ですから、200ℓ以上の場合は車両の前後に「危」の看板を設置して消火設備を備えておく必要があります。
それに対して「運搬」の場合は、ドラム缶などの容器に危険物を収納して輸送する場合に使われ、指定数量に関係なく規制があり、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに区分された危険等級に応じた容器を使用して安全に輸送しなければなりません。
危険物や有害物質を輸送する場合には「イエローカード」の携行が励行されている
平成9年に東名高速道路で起きたタンクローリー横転事故をきっかけとして、危険物や有害物質を輸送する場合にはイエローカードの携行が励行されるようになりました。
この事故では、雨水と反応する脂肪酸クロライドを積載していましたが、どんな危険物なのかの特定ができずに消防措置が大幅に遅れ、高速道路が10時間以上閉鎖されるという大事故になりました。
イエローカードには積載している荷について、
①どの法律で規制されている危険物を積載しているか
②危険性や有害性はどんなものか
③性状は固定、液体、気体、水溶性のいずれか
④事故が発生した場合の応急措置の流れ
⑤緊急通報・連絡先
⑥荷の特徴や性質について
⑦漏洩、飛散したときはどういう措置を行えばよいか
⑧発火・火災が発生したときはどう措置をすればよいか
⑨万一、人体に火傷等があった場合どういう措置をすればよいか
などの内容が記載されています。
このイエローカードは今はどの危険物輸送のトラックにも携行されていると思いますが、意外と読んでいないドライバーも多いですから、あらためてどんなものなのかを認識してもらうべきだと思います。
イエローカード(例)
危険・有害物質を輸送する場合に必要な携行品
危険・有害物質を輸送する場合、その荷物を運ぶのに適合した危険物取扱者の免状や高圧ガス移動監視者証を携行するのはもちろんですが、ほかにも携行しなければならない備品があります。
- 火災時に適合する消火器
- 赤旗または懐中電灯
- メガホン
- 歯止め(2個以上)
- 停止表示器
- 工具類
- 高圧ガスの場合は漏洩検知剤、皮手袋
区分等級(1~7級)によって必要な携行品が増えますが、おおむね上記はすべての等級で必要なものになります。
消火器については、A=普通火災 B=油火災 C=電気火災 の3つに適合したABC粉末消火器を搭載しているトラックがほとんどだと思います。
消火器については一定の年数が経った場合や、ホースの取付部や底面に損傷が見られる場合は、新しい消火器に買い変えたほうが良いでしょう。
また、高圧ガスの携行品である漏洩検知剤は、台所用洗剤などの石鹸水でも代用可能です。
タンクローリーで輸送する場合、油槽基地などで荷積みをしますが、たまに安全パトロール隊がやってきて携行品を確認する場合がありますので、漏れの無いように普段から携行品を確認しておくと良いでしょう。
消防法で定められている危険物輸送車両は消防査察がある
自家用給油施設を所有している事業所は、定期的に消防署による点検が入りますが、たとえばガソリンを運ぶタンクローリーなど、消防法上の危険物を移送するトラックに関しても、消防署の査察点検が入ります。
トラックに関しては容器検査に関する書類や導通がとれるか等の点検がありますが、ドライバーの危険物取扱者の免状も確認されますので、毎日の点呼時には運転免許証とあわせて危険物の免状もちゃんと携帯しているかを確認しなくてはなりません。
また、危険物取扱者はその業務に従事する場合は「危険物保安講習」を3年度に1回受けなくてはなりません。
この講習は、期限を知らせる通知などは来ませんので、自ら管理する必要があります。
荷主によっては講習期限が切れていると荷を積ませない等言われる可能性がありますので、ドライバーの保安講習日程等の管理表を作成するなどして講習漏れのないようにしておきましょう。
危険・有害物質を輸送する場合に気を付けたいことまとめ
危険・有害物質を輸送する場合には、貨物事業に関する法令だけでなく、荷によって規制を受ける法令も同じく重要になってきます。
これら危険・有害物質を輸送する場合には、ドライバー自身が必ずイエローカードの中身を確認し、万が一事故等がおきた場合にはスムーズに措置を行えるようにしておく必要があるでしょう。
定められた携行品についても、トラックの日常点検のほかに、日ごろから抜けがないかを確認し、もし足りないものがあればすぐに管理者等に伝えるようにしましょう。
高圧ガスを輸送するトラックに関しては、漏洩検知剤を石鹸水などで代用する場合、月日が経つと蒸発して中身がカラになっているケースがあったりしますので、注意点です。
危険物類を搭載したトラックは、万が一のことがあると被害が甚大になりやすいため、日ごろからドライバーの健康管理や事故時の対応などについて、万全の体制にしておきましょう。