こんにちは。
運送業で必ず行わなければならない義務として、点呼があります。
なぜ点呼をする必要があるのか?といえば、やはりこれから1人ないしは2人で車に乗って会社を出発し、事業者側の監視の目から離れることになりますから、ドライバーの健康状態が悪かったり、免許不携帯で車に乗せれば事故や違反などを起こします。
もしそうなれば事業者側にも当然責任が問われる結果となりますよね。
点呼をとることは事故や違反を未然にふせぐ防止策になりまし、万が一重大事故などが起きた場合には当然点呼の実施状況を調査されます。
そこで点呼をまったくやっていなかったなんてことになると事業としての継続も危うくなってきますよね。
点呼の詳細については貨物自動車運送事業輸送安全規則で定められています。
点呼とは?
乗務開始前
貨物自動車運送事業輸送安全規則
第7条(点呼等) 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面により点呼を行い、次に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、ならびに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示をしなければならない。ただし、輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、貨物自動車運送事業者が点呼を行う場合にあっては、当該貨物自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
ここでいう国土交通大臣が定めた機器による点呼とは、Gマーク取得事業者等に認められたIT点呼のことを指します。また、Gマーク未取得事業者に関しても条件を満たせばIT点呼を導入できますが、また別途説明します。
乗務前点呼での確認事項
点呼における確認事項では続いて次のように規定されています。
貨物自動車運送事業輸送安全規則
第7条
1.酒気帯びの有無
2.疾病、疲労、睡眠不足、その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
3.道路運送車両法第47条の2第1項および第2項の規定による点検の実施またはその確認(日常点検)
平成30年6月より、2の確認事項に「睡眠不足」が追記されましたが、もともとはその他の理由に睡眠不足も含まれており、他に覚せい剤の使用はないか等の物々しい理由も、その他の理由に含まれています。
乗務終了後
貨物自動車運送事業輸送安全規則
第7条の2 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を終了した運転手に対し、対面により点呼を行い、当該乗務に係る事業用自動車、道路および運行の状況ならびに他の運転手と交替した場合にあっては第17条第4号の規程による通告について報告を求め、および酒気帯びの有無について確認を行わなければならない。
尚、乗務終了後についてもIT点呼が認められていますが、原則はやはり対面点呼が必要となります。
点呼の実施について
対面点呼(原則)
主に点呼は乗務開始、乗務終了したときに運行管理者が対面により行うことが求められます。例えば事務所と車庫が離れていたり、早朝深夜で運行管理者が出勤していない場合でも対面点呼が求められます。
補助者がいる場合
補助者をあらかじめ選任している場合には、運行管理者の不在時等は補助者に点呼を行わせることができます。その場合、点呼総回数のうち、運行管理者が3分の1以上行わなければなりません。
また、補助者を選任するためには運行管理者資格者証を取得しているか、運行管理者基礎講習を受講していることが必要です。
電話点呼(例外)
遠方で乗務開始や乗務終了するために営業所で両点呼が対面で出来ない場合には例外として電話点呼をすることができます。例えば遠方到着地で1泊し休息期間を挟む場合などにおいて、初日乗務終了時と休息期間後に乗務開始前に行う際に点呼を行います。また、酒気帯びの有無を確認するためアルコール検知器を携行する必要があります。
つまり、1泊運行の場合、合計4回点呼を取る必要がありますが、1日目乗務前と2日目乗務後を除いた2回を電話で点呼をとることができます。
中間点呼(例外)
例えば2泊3日以上で運行を行う計画において、乗務前と乗務後をいずれも対面点呼できない場合に、1日目乗務終了後、休息期間を挟んで2日目乗務開始前、2日目の乗務途中、2日目乗務後、休息期間を挟んで3日目乗務前を電話や無線等で点呼をとることができます。
つまり、2泊3日運行の場合には全7回の点呼が必要ですが、初日乗務前と最終日乗務後の2回を除いた5回を電話で点呼をとることができます。
これら例外の扱いの点呼については、「運行上やむを得ない場合」となっており、「発着が深夜なので点呼者が出勤していないから点呼が出来ない」というような場合には認められません。
点呼記録簿
点呼を実施した際には、点呼記録簿に記録を残さなければなりません。
貨物自動車運送事業輸送安全規則
第7条の5 貨物自動車運送事業者は、第1項から第3項までの規定により点呼を行い、報告を求め、確認を行い、および指示をしたときは、運転者ごとに点呼を行った旨、報告、確認および指示の内容ならびに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を1年間保存しなければならない。
1.点呼を行った者および点呼を受けた運転者の氏名
2.点呼を受けた運転者が乗務する事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
3.点呼の日時
4.点呼の方法
5.その他必要な事項
各点呼時に必要な事項をまとめると、以下のようになります。
乗務前の点呼事項
- 点呼実施者氏名
- 運転者氏名
- 運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号等(車両ナンバー等)
- 点呼日時
- 点呼方法(アルコール検知器使用の有無、対面点呼以外の場合はその方法)
- 酒気帯びの有無
- 運転者の疾病、疲労、寝不足等の状態
- 日常点検について
- 指示事項
- その他の必要事項
状況によっては運行をさせない選択も出てきます。
中間点呼
- 点呼実施者氏名
- 運転者氏名
- 運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号等(車両ナンバー等)
- 点呼日時
- 点呼方法(アルコール検知器使用の有無、対面点呼以外の場合はその方法)
- 酒気帯びの有無
- 運転者の疾病、疲労等の状態
- 指示事項
- その他の必要事項
中間点呼記録簿は2泊3日以上の運行を行った際に記録と保存が必要になります。
乗務後点呼
- 点呼実施者氏名
- 運転者氏名
- 運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号等(車両ナンバー等)
- 点呼日時
- 点呼方法(アルコール検知器使用の有無、対面点呼以外の場合はその方法)
- 自動車、道路および運行状況
- 交替運転者がいる場合は交替運転者に対する通告
- 酒気帯びの有無
- その他の必要事項
点呼記録簿は巡回指導時等においても重点事項として入念に確認されますので、運転者ごとに点呼を行った結果や指示内容を点呼記録簿に記録し、その点呼記録簿を必ず1年分は保存しておきましょう。
点呼未実施の罰則は?
点呼については、点呼が必要な回数100回に対して次のようになります。
未実施回数 | 初回違反 | 再違反 |
19件以下 | 警告 | 10日車 |
20件以上49件以下 | 10日車 | 20日車 |
50件以上 | 20日車 | 40日車 |
たとえば出発が朝早いため、出発前点呼を未実施で帰庫時に点呼したパターンや、逆に朝出庫時の点呼はしたけれども帰庫が深夜になったため帰庫点呼をしなかった等、日常的にどちらかの点呼を行ってない場合には当然100回中50件以上となってしまいますよね。
点呼をまったく行っていない場合は、巡回指導が来た時に速報対象となる可能性はありますが、上記のようなケースだと改善を求められ、改善報告書の提出をうながされる場合がありますから、必ず改善していきましょう。
点呼まとめ
運送業の特性上、ドライバーが会社内にいる時間は少なく、逆に外に出ている時間のほうがはるかに長い事業形態です。
そのはるかに長い時間を安全に運行できるかは出発前、中間、帰庫点呼で事業者側がしっかりドライバーの状態等を確認しているかが最重要になってきます。
「ルールで決められているから仕方なくやる」ということではなく、事業として健全に運営していけるかという問題にも及んでくるため、漏れのない点呼を実施していく必要があります。
また、実際に点呼を行うにしても適当に実施している事業所は本当に多く、ドライバーの健康状態や免許の携帯等、しっかり確認して事故や違反を未然に防ぎましょう。
うちの会社 自分が入社して7年になりますが、対面点呼なんて1回もしたことないです。
先日社長にさりげなく聞いた所、どこもやってないから全然大丈夫って笑ってました
大橋様
初めまして、コメントありがとうございます。
法令の遵守についてはちゃんとやろうとする社長さんと、やらない社長さんで両極端な印象ですね。
で、点呼も実際まったくやっていないというところも確かに多いです。
現実問題として中小企業で運行管理者&補助者の対面点呼100%実施の環境を整えるのはほぼ無理があります。
巡回指導では多少誤魔化しがききますが、一番問題になるとすれば重大事故が発生して行政監査が入って突かれるというケースです。
ですから安全運転をして事故にはほんと気を付けてください!