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🧠「交通事故に関わる運転者の生理的および心理的要因とこれらへの対処方法」ってなに?|トラック運転者向け指導指針⑩

事故は「ミス」や「不注意」だけでなく、
**体の状態(生理的要因)や、心の状態(心理的要因)**が大きく影響しています。

「疲れていたから」「イライラしていたから」――
そうした状態でハンドルを握ると、事故のリスクは確実に高まります。
この記事では、交通事故を引き起こす生理・心理の要因と、その対策について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 生理的・心理的要因とは何か?
  • よくある事故の背景例
  • ドライバー自身が気をつけるべきポイント
  • 管理者・会社ができるサポートや対処法

🩺 生理的要因とは?

主な生理的リスク

  • 疲労(長時間運転、睡眠不足)
  • 空腹や低血糖状態
  • トイレを我慢している、体調が悪い
  • 持病や薬の影響(眠気・集中力低下など)

これらはすべて、集中力・判断力・反応速度の低下につながり、
事故を招く大きなリスクになります。

🧠 心理的要因とは?

よくある心理状態とリスク

心理状態

起こりやすいミス

イライラしている

強引な割り込み、急ハンドル

焦っている

信号無視、確認不足

不安が強い

判断ミス、ブレーキの遅れ

油断・過信

見落とし、速度超過

落ち込んでいる

注意力散漫、反応遅れ

🚩 職場内の人間関係トラブルも“事故の火種”に

交通事故は運転中だけでなく、運転前の人間関係のストレスやトラブルが引き金になることもあります。

たとえば…

  • 同じ営業所内のドライバー同士が口論になり、怒りを抱えたまま運行に出発
  • 気持ちの整理がつかず、焦り・イライラした運転に直結
  • 割り込み・幅寄せ・スピード超過など、攻撃的な走行になりやすく、非常に危険

これは単なる「感情の問題」ではなく、心理的な要因による事故リスクと捉えるべきです。

管理者ができること

  • 点呼時に「声のトーン」「顔色」「態度」に異変がないかを観察
  • トラブルがあった場合は、当事者を分ける・休憩を取らせる・一時的に乗務を見送るなどの判断も必要
  • 必要に応じて、外部相談機関や社内の相談担当者と連携し、早めに対応

👉 「人間関係のもつれから事故」は、実は運送現場では珍しくありません。
感情的なまま運転させない判断が、事故を防ぐ管理者の責任でもあります。

 

📉 実際に起きた事故事例

事例①:睡眠不足での居眠り運転

深夜の連続運行後に仮眠を取らず出発。走行中にまぶたが落ちて反応が遅れ、追突事故に。
→ 幸いけが人なしだったが、車両修理と信頼損失で大きな損害。

事例②:家庭トラブル後の運転で接触事故

私生活の問題で気が立っていたドライバーが、車間を詰めすぎてバイクと接触。
→ 後日カウンセリングを実施し、同様の事例の再発防止につながった。

「納品時間に遅れそう」という焦りも、事故の原因に

トラックドライバーにとって、納品時間を守ることは非常に重要な責任のひとつですが、
「間に合わないかもしれない」という焦りの心理は、事故の引き金になる危険な要因でもあります。

よくあるリスク行動

  • 黄色信号でも強引に交差点に突っ込む
  • 無理な追い越し・車間距離の詰めすぎ
  • 一時停止・確認を省略してしまう
  • 慣れない道でスピードを出しすぎる

このような行動は、すべて「焦り」の心理が引き起こすものです。

🚚 管理側ができる配慮

  • 「ギリギリの配車」ではなく**“ゆとりのあるスケジュール”**を設定
  • ドライバーには「遅れるときは必ず連絡を」という文化を浸透させる
  • お客様にも「安全運転優先」の理解を得るよう営業と連携する

👉 焦っても、事故を起こせば納品も信頼も全部失う
「急がば回れ」こそ、安全運転の鉄則です。

また、どうしても間に合わないと思ったときはすぐ運行管理者に連絡を入れ、会社側から納品先に説明してもらうことが一番安全です。

管理者側もあらかじめ間に合わないときは落ち着いて会社に連絡するよう周知しておくべきでしょう。

👨‍🏫 対処方法と現場でできるサポート

運転者本人ができること

  • 出発前に**「体調・気分チェック」**を行う(眠気・だるさ・不機嫌さ)
  • 無理をしない勇気を持つ(「今日はきつい」と言える職場づくり)
  • 十分な睡眠、バランスの良い食事、こまめな休憩を心がける

管理者・会社ができること

  • 点呼時に「いつもと違う様子」を感じたら一声かける
     例:「体調どうですか?」「昨晩は眠れましたか?」
  • 感情的になっているドライバーには休憩・乗務交代・面談も検討
  • 長時間運行が続いている人には強制的な休養日やシフト変更を行う
  • 産業医やカウンセラーとの連携体制を整えておく

ヒント:チェックリストの活用

簡単なチェックリストを使うだけで、日々の体調・気分の変化に気づけることがあります。

📋 出発前チェック例(5秒でできる)

  • □ 昨日、6時間以上寝ましたか?
  • □ 食事をとりましたか?
  • □ イライラ・落ち込み・焦りはありませんか?
  • □ 頭がぼーっとしていませんか?
  • □ 異常があれば運行管理者に報告しましたか?

まとめ

体と心の状態は、運転の“隠れたリスク”です。

  • 「元気そうに見えても、内面は疲れている」ことがある
  • 「大丈夫」の一言に甘えず、見えない不調を見抜く力と体制が必要
  • プロとして、無理をしない/させない職場環境が事故を防ぎます

🚚 体調管理”も、“心の声に気づく”のも、安全運転の一部です。

また、出発前の心身状態チェックリストを簡易で作成しましたので、ご参考ください。

トラック運転者用|出発前チェックリスト(安全・体調確認)

チェック項目

内容

1. 睡眠時間は足りていますか?

目安:6時間以上、眠気・疲労感はありませんか?

2. 食事は取りましたか?

空腹・低血糖は集中力低下につながります

3. 体調に異常はありませんか?

頭痛・めまい・吐き気・下痢などはありませんか?

4. 心に不安・怒り・焦りはありませんか?

感情が不安定な状態での運転は危険です

5. 荷物の積載状態は問題ありませんか?

固定バンド・ラッシングなど確認済みか

6. 車両点検は済んでいますか?

タイヤ・灯火類・ブレーキ・オイル・燃料

7. 運行経路は確認できていますか?

通行止め・高さ制限・積雪などに注意

8. 緊急連絡先(運行管理者)を把握していますか?

異常時にすぐ連絡できるよう確認

9. イエローカード・危険物関連書類を持参していますか?

※危険物積載時のみ

10. 気象状況を確認しましたか?

強風・大雨・積雪などに備える