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運転者の運転適性に応じた安全運転|トラック運転者向け指導指針⑨

すべての運転者が“同じように”運転できるわけではない

運転業務は単純な作業に見えて、実は非常に個人差の影響を受けやすい業務です。
体力・集中力・判断力・性格など、**ドライバー一人ひとりの「運転適性」**によって、同じ状況でも対応に差が出ることがあります。

だからこそ、安全運転を確保するためには、画一的な指導だけではなく、各運転者の特性に応じた個別対応が求められます。

運転適性を見極める|注目すべきポイントとは?

以下は、運転適性を判断する上で特に注意すべきポイントです。

集中力や注意力にムラがないか?
長時間運転でも注意力を保てるかは事故防止の基本です。

判断や操作の正確性
とっさの判断に時間がかかったり、運転操作が雑な傾向はないか。

視力・聴力・反応速度などの身体的能力
高齢のドライバーには定期的な健康チェックが重要です。

性格やストレス耐性
焦りやすい、短気、不安定といった性格面も運転には影響を与えます。

定期的な適性診断の結果を活かす|科学的根拠に基づく安全管理

運転者の適性を正しく把握するためには、客観的なデータをもとにすることも非常に重要です。
その手段のひとつが、「運転適性診断(NASVAの適性診断など)」です。

この診断では、注意力・反応時間・判断力・ストレス耐性などを測定し、運転に対するリスク傾向が数値として可視化されます。
特に以下のようなポイントで活用できます。

  • 新人採用時の初期評価
  • 事故・違反があったドライバーへの再教育
  • 定期診断(1年~3年ごと)による継続的なチェック
  • 高齢ドライバーの安全運転継続の判断材料

そして大切なのは、診断結果を“渡して終わり”にしないこと。
結果に応じて個別の指導を行い、必要に応じて運行内容や指導方法を見直すことが、**本当の意味での「適性に応じた安全運転管理」**です。

また、指導する側である運行管理者や教育担当者自身も、可能であれば適性診断を受けておくことが望ましいです。
自分自身の特性を理解したうえで指導にあたることで、ドライバーとの接し方・伝え方にも深みが生まれ、効果的な指導につながります。
「見える化されたデータ」で話すことは、信頼にもつながります。

 

安全運転のためにできる工夫|適性に合わせたサポート

適性に応じた安全運転支援の例として、以下のような取り組みが効果的です。

若手・未経験者への“段階的な経験付与”

いきなり長距離や繁忙ルートに投入せず、徐々に負荷をかける育成方法をとりましょう。

高齢ドライバーには“体調管理と無理のない配車”

長距離よりも短距離や時間帯を工夫した業務分担が効果的です。

ヒヤリ・ハットが多い人には“運転特性の分析と再教育”

記録をもとに、どの場面でミスが起きやすいかを本人と一緒に振り返る機会を設けましょう。

デジタコ・ドラレコのデータ活用

急ブレーキ・急加速・速度超過などの運転挙動を可視化することで、運転傾向を把握できます。

「この人には、この運転が合っている」という配慮が事故を防ぐ

運転適性に応じた配慮は、**決して“甘やかし”ではなく、“戦略的な安全管理”**です。
同じルートでも、適性のある人に任せればリスクは格段に下がります。

運行管理者や事業主が「誰に、どの運行を任せるか」を適切に判断することは、
安全だけでなく効率や生産性向上にもつながる重要なマネジメントです。

現場目線のひとこと(元・運行管理者より)

私が運行管理していた時期に強く感じていたのは、「事故が多い人は、本人の性格や思考パターンに原因があることが多い」という点です。

たとえば、焦りがちな人には“時間に余裕を持った配車”を意識的に組むようにしていました。
また、“確認不足でヒヤリが多い人”には、朝礼時にチェックリストを使った確認作業を導入するなど、個別対策を徹底していました。

「全員に同じ指導」では安全は守れません。
人に合わせた指導が、結果として会社全体の事故ゼロにつながると実感しています。

さらに補足すると、極端に事故やヒヤリハットが多いドライバーの場合、精神的な不調が隠れている可能性も考慮する必要があります。
例えば、躁うつ病(双極性障害)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの精神疾患がある場合、本人の努力だけでは安全運転を維持することが困難なケースもあります。

そのような場合には、無理に現場に出すのではなく、一度医師の診断を受けてもらい、専門的な見地から勤務の可否や配慮事項を把握することが重要です。
企業側が安全配慮義務を果たすうえでも、精神的健康に対する理解と対応が欠かせません。

まとめ|“人に合わせた安全管理”が事故を防ぐ

  • ドライバーにはそれぞれ異なる運転特性・適性がある
  • 一律指導ではなく「個別対応・工夫」が事故防止のカギ
  • 管理者が適性を見極め、適材適所の運行計画を立てることが重要
  • ドラレコ・KYT・ヒヤリハット情報など、データと現場感覚を融合させた管理が効果的

「この人には、この運転が合っている」という配慮が事故を防ぐ

運転適性に応じた配慮は、**決して“甘やかし”ではなく、“戦略的な安全管理”**です。
同じルートでも、適性のある人に任せればリスクは格段に下がります。

運行管理者や事業主が「誰に、どの運行を任せるか」を適切に判断することは、
安全だけでなく効率や生産性向上にもつながる重要なマネジメントです。

また、どれだけ教育しても事故が繰り返される、運転操作に明らかな不安があるといったケースでは、思い切って“運転業務から外す”という判断も必要です。
たとえば内勤業務や構内作業、補助的な業務などへの配置転換は、本人の負担軽減にもなり、会社全体の安全を守る結果にもつながります。

「向いていない人を無理に続けさせない」という決断も、責任ある管理者の大切な仕事です。

私が運行管理をしていたときも、毎月のように物損事故を起こすドライバーがおり、病院の診断を受けたところ躁うつ病であることがわかりました。

そのドライバーは結局目の届かない運転の仕事ではなく、社内の車両整備などを補助させたことがあります。

まずは管理者側が病気について理解してあげることも重要だと思います。