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🧯「危険物を運搬する場合に留意すべき事項」ってなに?|トラック運転者向け指導指針⑥

危険物の輸送は、通常の荷物と違い、事故=人命に直結する重大なリスクを伴います。
運転技術があるだけでは不十分。法令・積み方・安全意識の全てが求められる運行です。

本記事では、危険物を運搬する際の重要なポイントや実務上の注意点を、トラックドライバー・運行管理者向けにわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 危険物の分類と運送時の基本ルール
  • 積載・運搬時の注意点
  • 間違えるとどうなる?重大事故事例
  • 法令遵守に必要な表示・資格・装備

🔥 危険物ってなに?どんな種類があるの?

危険物とは、引火・爆発・腐食・毒性・酸化性などを持つ物質で、
消防法で以下のように分類されています(一部抜粋):

類別

主な物質

備考

第1類

酸化性固体

塩素酸塩など(発火助長)

第2類

可燃性固体

マグネシウム粉など

第3類

自然発火性物質

黄リンなど

第4類

引火性液体

ガソリン・灯油・アルコール類(最も運搬が多い)

第5類

自己反応性物質

過酸化物など

第6類

毒物

硝酸・ヒ素化合物など

🚛 危険物運搬時に守るべき基本ルール

積み合わせの禁止に注意!

  • 相互に反応して爆発・有毒ガスを発生する組み合わせは、絶対に一緒に積んではいけません!
  • 引火性液体×酸化剤、可燃物×毒物などは厳禁

イエローカードの携行は義務

  • イエローカードとは、事故発生時の初期対応・連絡先などが書かれた緊急対応カードです
  • 指定数量以上の危険物を運ぶ際は、ドライバーが必ず携行し、内容を理解しておくことが義務となります

荷姿・固定方法に細心の注意を

  • 缶・ドラム缶・ポリ容器など、**容器形状に応じた固定法(すべり止め・ベルト・緩衝材)**を徹底
  • 漏れ・転倒がないように、常に車両を水平に保つ運転が基本

表示・標識も忘れずに

  • 「危」マーク(赤枠の菱形表示)や、車両後方への危険物標識など、
     定められた表示がないと運送不可です

有資格者でなければ運べない!

  • 危険物の種類に応じて、ドライバーは危険物取扱者の資格(乙4・丙種など)を有することが条件
  • 無資格者が運搬するのは法令違反となり、ドライバー・運送会社ともに重い処分の対象となります

 

🎓 危険物の種類ごとに必要な資格一覧

危険物を運搬・取り扱うには、消防法に基づく「危険物取扱者」資格が必要です。
扱う物質や数量に応じて、適切な類別の資格を所持していなければなりません。

危険物の類別

主な該当物質

必要な資格

第1類:酸化性固体

硝酸塩・塩素酸塩

危険物取扱者 甲種 または 乙種1類

第2類:可燃性固体

マグネシウム・赤リン

乙種2類 または 甲種

第3類:自然発火性・禁水性物質

黄リン・金属ナトリウム

乙種3類 または 甲種

第4類:引火性液体(※最も多い)

ガソリン・灯油・アルコール類

乙種4類 または 甲種

第5類:自己反応性物質

有機過酸化物など

乙種5類 または 甲種

第6類:毒物・酸化性液体

硝酸・ヒ素化合物

乙種6類 または 甲種

 

🚚 運転するだけなら資格不要?

実は、トラックで運ぶだけの場合(積み込み・荷下ろしをしない)であっても、
危険物の種類や数量によっては、取扱者資格が必要になるケースがあります。

👉 例えば、ガソリンや灯油を積んだタンクローリーの運転手は、乙種4類の資格所持が必須です。

📌 丙種はこんな場面で使われる

  • 丙種危険物取扱者は、第4類の一部(ガソリン・灯油・軽油など)を少量取扱う人向けの資格で、
     ガソリンスタンドなどで使用されますが、運搬では使用できないケースが多いため注意が必要です。

💥 危険物運搬中の事故は“即・大惨事”につながる

通常の貨物であれば、接触事故や積荷破損で済むケースもあります。
しかし危険物の場合は、ひとたび事故が起きれば「命」「街」「インフラ」すべてを巻き込む大災害になりかねません。

リスクの代表例

  • 火災・爆発事故: 引火性液体や酸化性物質の漏洩・混合によって大爆発が発生する可能性
  • 有毒ガスの発生: 化学反応によって毒性のある気体が広範囲に拡散
  • インフラ破壊: タンクローリーの炎上により橋梁や高速道路を損壊 → 数十億円規模の復旧費用
  • 二次災害の誘発: 消火活動の遅れ、通行止めによる医療・物流・経済への打撃

責任は“現場だけ”では済まされない

  • 加害者はもちろん、運送会社、荷主、運行管理者までもが
     損害賠償・刑事責任・社会的制裁の対象となります。

👉 危険物輸送は「ちょっとの油断」が許されない領域です。
だからこそ、平時からの点検・確認・訓練が命と社会を守る行動につながります。

事故事例

事例①:積み間違いで化学反応 → 爆発事故

  • 酸化剤と可燃性液体を誤って同一便に積載
  • 走行中の振動で容器が損傷し、反応・発火 → 車両が炎上し周囲に延焼
  • 会社は行政処分+数千万円の賠償責任

事例②:イエローカード未携帯で消防の初動遅れる

  • 高速道路でドラム缶から漏洩発生
  • ドライバーが内容物・対応方法を即答できず、初期対応が遅れて負傷者発生
  • 所轄消防と自治体が会社に指導・報道され社会的信頼が失墜

📌 危険物運搬時のチェックリスト(抜粋)

  • 荷物の分類・性質を確認した
  • 積載禁止の組み合わせがないか確認した
  • イエローカードを携行している
  • 荷物は適切に固定されている
  • 表示・標識は正しく取り付けている
  • 所持資格が有効である(運転者)
  • 出発前点検と積載点検を行った

まとめ

危険物輸送は、
ほんの少しのミス”が大事故に直結する特殊な運行です。

  • 積載方法・表示・携行物・資格すべてが揃って初めて「安全に運べる」状態になります
  • 特に新人や経験の浅いドライバーには、定期的な座学+実地確認+同行指導が必要です

🧯 「危険物を運ぶという意識」を忘れず、法律と命を守る運転を。

🚛 危険物運搬時は“いつも以上の安全運転”を

危険物を積んで走るということは、
「もし事故が起きたら、命や街を巻き込む可能性がある」という前提で運転する必要があるということです。

求められる運転姿勢の例

  • 急ブレーキ・急ハンドルの禁止(液体の揺れや荷崩れを防ぐ)
  • ゆっくり発進・ゆっくり停止の徹底
  • 長時間運転の合間には必ず休憩を挟む(集中力の低下を防ぐ)
  • 周囲の車両や歩行者への“気配り運転”(万が一の予防)
  • 進路変更・右左折時はいつも以上に広く・丁寧に(内輪差・死角の確認)

👉 危険物輸送中のトラックは、まさに「走る危険物倉庫」。
ドライバーには通常の業務よりも高い緊張感と、プロとしての自覚が求められます。