🛣️「トラックの運行の安全を確保するために遵守すべき基本事項」ってなに？｜トラック運転者向け指導指針②

トラックの運行は、荷物を届けるだけではありません。
安全に、確実に、そして社会に迷惑をかけずに運ぶことこそがプロの役割です。

そのためには、日々の運行で守るべき「基本」があります。
今回は、トラックドライバーが遵守すべき安全運行の基本事項について解説します。

✅ この記事でわかること

• トラック運転で最低限守るべき安全行動
• 日常点検や点呼の重要性
• 法令・マナーの遵守項目
• トラブルを未然に防ぐ基本動作
• 指導時に伝えるべきポイント

📋 トラックの安全運行における基本ルール

トラック運行においては、以下の「3つの基本」を徹底することが安全と信頼の土台となります。

▶ ① 車両の安全管理（点検・整備）

• 運行前には**日常点検（タイヤ・灯火類・ブレーキ・オイルなど）**を必ず実施
• 不具合がある場合は運行中止の判断も含めて即報告
• 洗車や清掃も「安全確認の一環」と捉える

👉 整備不良による事故は、すべて未然に防げる事故です。

▶ ② 法令とルールの遵守

• 制限速度を守る（特に一般道ではトラックは制限が厳しいことも）
• 信号・標識・一時停止を確実に守る
• 携帯電話の使用禁止／シートベルト着用の徹底
• トラック専用の法規（過積載禁止、駐停車禁止区間 など）も把握しておく

👉 「慣れてるから大丈夫」という油断が最も危険です。

▶ ③ 社会的マナーと配慮

• 狭い道では減速・徐行・譲り合い
• 荷下ろしや待機中にアイドリングストップ・エンジン音の配慮
• 駐車場所の確認（私有地や迷惑駐車を避ける）

👉 トラックは地域住民・他車両から常に見られていることを意識しましょう。

🚛 発進と停止は「ゆっくり」が基本

トラックは車体が大きく、積み荷も重いため、発進・停止時の挙動がそのまま安全性に直結します。

✅ 急発進すると…

• 荷崩れや積荷の損傷につながる
• 燃費が悪化し、車両への負担も大きい
• 周囲の歩行者や自転車を驚かせる

✅ 急停止すると…

• 車内での荷物移動や転倒
• 追突事故の危険性
• ブレーキへの過負荷と摩耗促進

👉 **「ゆっくり発進、ゆっくり停止」は、プロの運転の“基本中の基本”**です。
毎日の点呼や教育時に、「本当にできているか？」を今一度見直すよう促しましょう。

📦 荷積みから荷下ろしまでの基本動作を徹底しよう

トラック運行は「走る」だけではありません。
荷積みから荷下ろしまでの一連の作業が、安全・信頼・効率を左右します。

✅ 荷積み時の基本

• 荷物の形状・重量を確認し、重いものを下・軽いものを上に積む
• 重心が片寄らないようバランスを意識
• 固定ベルト・ラッシングベルト等でしっかりと荷締め
• 荷崩れの可能性がある場合は、毛布・滑り止め等で緩衝対策

✅ 運搬中の注意

• 急発進・急ブレーキ・急ハンドルは荷崩れの原因
• 路面の段差やカーブではスピードを控える
• 音や感触に異常があれば、すぐに停車して点検

✅ 荷下ろし時のポイント

• 荷台のロックやシャッター開放時は周囲の安全を確認
• 落下しそうな荷物は事前に確認し、徐々に解放
• フォークリフトや台車との連携時は声かけと合図を徹底
• 荷下ろし後も荷台清掃・忘れ物確認を忘れずに

👉 荷物の安全は、ドライバーの信頼と直結しています。
事故を防ぐだけでなく、荷主・顧客との信頼関係構築のためにも、基本動作の徹底は欠かせません。

⚠️ 基本を守らなかった場合のリスク

🔧 日常点検を怠ったことによる事故事例

事例①：車輪脱落による重大事故

近年、大型トラックの車輪脱落事故が年間100件以上発生しています。
その主な原因は、タイヤ交換作業時の清掃不足、給脂の未実施、締付トルクの不足など、点検整備不良によるものです。
特に冬季（11月～3月）に集中し、タイヤ交換後1ヶ月以内に多く発生する傾向があります。

事例②：ブレーキ引き摺りによる車両火災事故

走行中、後方から破裂音がしたため停車し確認したところ、左後輪付近から発煙して出火。左後輪付近を焼損した。
推定原因：
ブレーキ・ペダルのピボットピン部に固着が発生し、ブレーキ・ペダルの戻り不良が発生。これによりブレーキ引き摺りが生じ、出火に至った。
必要な対策：
日常点検でブレーキ・ペダルの踏みしろや効き具合を確認し、異常があれば整備管理者等に報告することが重要です。

事例③：整備不良による交通事故

年間走行距離が多いトラックは、部品の経年劣化が早く進行します。
定期的な点検整備を怠ると、保安基準を満たさない状態での走行となり、整備不良として道路交通法違反や道路運送車両法違反で処分される可能性があります。 ​

🚛 スピードの出しすぎによる事故事例

事例①：高速道路での多重衝突事故

あるトラックドライバーが、寝坊により出発が1時間遅れたため、高速道路で法定速度を40km/hも上回る時速120kmで走行していました。
前方のパーキングエリアから本線に合流しようとするマイクロバスを避けようとした際、急な車線変更を行い、結果的にマイクロバスに追突。
この事故により、マイクロバスが横転し、死者1名、重軽傷者13名という大事故となりました。

事故の原因：

• 速度超過：​法定速度を大幅に超える走行が、適切な回避行動を妨げました。​
• 過労運転：​無理な運行計画によるドライバーの過労が、判断力の低下を招きました。​

教訓：

• 適切な運行計画：​無理のないスケジュール設定が重要です。​
• 法定速度の遵守：​速度超過は重大事故のリスクを高めます。​

事例②：下り坂でのブレーキ性能低下による事故

長い下り坂をトレーラーで走行中、ドライバーは適切なエンジンブレーキを使用せず、フットブレーキを多用しました。
その結果、ブレーキが過熱し、フェード現象が発生。ブレーキが効かなくなり、前方の乗用車に追突し、自車も横転。
積み荷の鉄板が落下し、対向車線の車両にも被害を与え、計6名が負傷する事故となりました。

事故の原因：

• 速度管理の不備：​下り坂での速度超過とブレーキ多用による性能低下。​
• 技術不足：​エンジンブレーキの適切な使用方法の理解不足。​

教訓：

• エンジンブレーキの活用：​下り坂ではエンジンブレーキを適切に使用し、フットブレーキの過熱を防ぐ。​
• 速度制御：​勾配に応じた適切な速度管理が必要。​

事例③：雨天時のスリップによる横転未遂事故

雨天時、高速道路のジャンクションでトラックを運転中、速度を出しすぎたため、後輪がスリップし、横転しそうになった事例があります。

事故の原因：

• 速度超過：​雨天時の路面状況を考慮しない速度での走行。​
• 路面状況の見落とし：​濡れた路面でのスリップリスクの過小評価。​

教訓：

• 天候に応じた運転：​雨天時は速度を控えめにし、スリップリスクを低減。​
• タイヤの状態確認：​溝の深さや空気圧を定期的にチェックし、グリップ力を維持。​

事例④：カーブでの速度超過による転倒事故

トラックが速度を出しすぎた状態でカーブに侵入し、荷崩れを起こしたり、カーブを曲がりきれずに転倒してしまった事例があります。 ​

事故の原因：

• 速度超過：カーブ手前での十分な減速を怠った。​
• 遠心力の過小評価：積荷の重心と遠心力の影響を考慮しなかった。​

教訓：

• カーブ手前での減速：カーブに入る前に十分に減速し、安定した姿勢で通過。​
• 積荷の固定：荷崩れ防止のため、積荷を適切に固定。​

🚛 トラックによる騒音・迷惑駐車の具体的な事例

事例①：運送会社の騒音に対する損害賠償命令

岐阜県瑞穂市の住民が、隣接する運送会社のトラックのエンジン音や荷降ろし作業、高圧洗浄機による洗車の音などの騒音により精神的苦痛を受けたとして、同社に損害賠償を求めました。​岐阜地裁は、住民の訴えを認め、運送会社に対し259万円の支払いを命じました。 ​

事例②：サービスエリアでの迷惑駐車

高速道路のサービスエリア（SA）やパーキングエリア（PA）では、トラックドライバーによる迷惑行為が報告されています。​例えば、乗用車数台分のスペースにトラックを横向きに停めて朝まで仮眠をとるケースや、ゴミのポイ捨てなどが挙げられます。​これらの行為は、他の利用者にとって大きな迷惑となっています。 ​

事例③：道の駅での普通車スペースへの大型トラック駐車

道の駅において、普通車用の駐車スペースに大型トラックが長時間駐車しているとの苦情が寄せられました。​カーテンを閉めており、貼り紙をしても動かさない状況で、歩道脇での排気ガスに関する苦情も発生しました。

事例④：住宅街での荷物積み下ろしによる騒音

住宅街にあるスーパーで、夜間や早朝に大型トラックが荷物の積み下ろしや搬入を行い、その騒音が住民の睡眠を妨げているとの苦情が寄せられています。​静かな時間帯の作業は、音が反響しやすく、周囲の住民にとって深刻な問題となっています。 ​

事例⑤：引越し作業中の駐車トラブル

引越し作業中、トラックの駐車スペースが確保できず、やむを得ず路上駐車を行った結果、近隣住民から苦情が寄せられるケースがあります。​特に都市部では、駐車スペースの確保が難しく、トラブルの原因となっています。

🧠 指導時に伝えるべきポイント

• 「安全は“特別なこと”ではなく“当たり前のこと”の積み重ね」
• 「荷物を届ける前に、自分が安全に戻ってくることが最優先」
• 「目に見えない“信頼”も一緒に運んでいる」

✅ まとめ

「基本を守る」――
それはプロドライバーとしての第一歩であり、
事故ゼロ・信頼アップ・業界全体の評価向上に直結します。

• 毎日の点検を欠かさない
• 交通ルール・マナーを守る
• 無理せず冷静に対応する

この3つを徹底することで、あなた自身と会社、そして社会を守ることにつながります。