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📦「貨物の正しい積載方法」ってなに?|トラック運転者向け指導指針④

運転は丁寧でも、荷物の積み方ひとつで大事故が起こることがあります。
トラックドライバーにとって「積載」は、運転技術と同じくらい重要なプロスキル。

今回は、「貨物の正しい積載方法」について、安全・効率・信頼を守るために必要な基本と注意点を解説します。

この記事でわかること

  • 正しい積載方法の基本ルール
  • 荷崩れや事故を防ぐための工夫
  • 実際に起きた積載ミスによる事故例
  • 指導時に伝えるべきチェックポイント

🚚 そもそも「積載」とは何を守るべき?

積載は、「ただ積めばいい」ではなく、以下の要素を同時に満たす必要があります。

観点

内容

安全性

荷崩れ・落下を防ぎ、走行中の事故を防止

法令順守

積載重量・積載物の表示などの法令遵守

効率性

荷降ろしのしやすさ、配送順への配慮

信頼性

商品破損を防ぎ、荷主や顧客の信用を守る

🧱 正しい積載方法の基本5原則

▶ ① 重い物は下に、軽い物は上に

  • 荷崩れを防ぎ、重心を下げる
  • 高く積むと横転リスクも増加

▶ ② 偏らず、均等に積む

  • 左右・前後に荷重が偏ると、ハンドルやブレーキに影響
  • 特に中型〜大型車は、荷重バランスが車両挙動に大きく関わる

▶ ③ 固定具で確実に固定する

  • ラッシングベルト、ロープ、スリング、滑り止めなどを活用
  • 「動かないだろう」ではなく、「絶対に動かない」が基準

▶ ④ 荷物同士にすき間を作らない

  • 走行中に揺れてぶつかり破損、荷崩れの原因に
  • 毛布やクッション材で埋めて“動ける空間”をなくす

▶ ⑤ 荷姿・形状に応じた工夫をする

  • 長尺物・パレット物・液体物など、それぞれ固定方法が違う
  • 濡れやすい商品はブルーシートで防水するなど、“扱う気持ち”が信頼につながる

🌪️ 強風による荷崩れにも要注意!

トラック運行中のトラブルとして、強風による積載物の移動や落下事故も少なくありません。

  • 軽量物(段ボール・発泡スチロール・空パレットなど)は風の影響を受けやすい
  • 荷台のシャッターや扉が開いた状態での強風被害も多発
  • シート掛けが甘かったことで、風で捲れ上がり積み荷が露出・飛散するケースも

👉 特に高速道路・橋の上・海沿いのルートでは、風速や横風に警戒し、
「風に飛ぶ可能性がある荷物は、しっかり固定・覆う」のが基本です。

🔥 危険物を積むときの注意点

危険物は、取り扱い・積み方・車両表示のすべてにおいて、細心の注意が求められます。
特に以下の点は必ず押さえておくべきです。

積載できる車両か確認する

  • 危険物は積載できる車両が法令で定められており
     たとえば「毒物」「引火性液体」「高圧ガス」などを積載するには、
     構造要件を満たす専用車両や表示義務が必要です。

イエローカードの携帯

  • 万一の事故や漏洩時に備え、**応急対応手順・緊急連絡先が記載された“イエローカード”**を必ず携行すること。
  • 運転者本人が内容を理解していることが前提です。

積み合わせ禁止を守る

  • 危険物同士で一緒に積んではいけない組み合わせがあります(例:可燃性物質×酸化剤)
  • 運行前に必ず**積載指示書・安全データシート(SDS)**を確認すること

積み方と固定は通常より慎重に

  • 衝撃・振動による漏れや摩擦・静電気の発生を防ぐため、
     滑り止め・緩衝材を活用し、しっかりと固定する
  • 容器が割れやすい・傾きやすい場合は、荷姿に応じた工夫を行う

積載後の点検も忘れずに

  • 積んで終わりではなく、車両側面の危険物表示、ラベルの剥がれ、荷台の密閉・施錠を再確認する
  • 必要に応じて点検記録を残しておく

🚨 危険物積載は「想定外」を起こさないことが命を守る

👉 危険物の輸送は、単なる運搬ではなく“危険の管理”そのものです。
事故の際はドライバーだけでなく、会社の責任・法的処分・社会的影響も非常に大きくなります。

だからこそ、“正確に・慎重に・法律を守って”積むことが最も重要な心構えです。

🚩 長尺物を運ぶときは「赤旗」が必須!

トラックで電柱・鋼管・木材などの長尺物を運搬する場合、
荷台から後方に1m以上突き出す積荷には、法令により赤旗(30cm四方)を取り付ける義務があります。
(道路交通法施行令 第22条)

なぜ赤旗が必要なのか?

  • 後続車両から積荷の存在が見えにくく、追突のリスクが高まるため
  • 特に夜間や悪天候では、突き出た部分が“見えない凶器”になる危険性があります

👉 赤旗は、「ここまで荷物があるぞ」という合図。
命を守るためのシンプルかつ重要な装備です。

🚨 注意点

  • 赤旗は風で見える位置にしっかり固定すること(たるみ・巻き込みNG)
  • 1m未満でも視認性が悪いと判断される場合は、旗の装着が推奨されます
  • 夜間運行では反射材付きの表示や灯火も必要になるケースがあります

 

 

⚠️ 積載ミスで起きた実際の事故

事例①:荷崩れによる横転事故

  • 荷台内で鉄材が固定不十分のまま運搬され、カーブで片側に偏り、車両が横転
  • 結果:自車横転+対向車を巻き込む事故に発展

事例②:荷物落下による第三者巻き込み

  • 高速道路走行中、バックドアのロックが甘く、走行中に荷物が落下
  • 後続車に直撃し、2台玉突き衝突
  • 荷主からの損害賠償請求と、信頼喪失により契約解除

事例③:液体容器の破損で商品廃棄

  • プラスチック製容器に積み荷の角が当たり、破損し液体が漏出
  • トラック床面が汚染 → 洗浄費用+全損扱いで弁償

🧑‍🏫 指導時に伝えたいこと

  • 運転前の“積載点検”は必須:ベルト緩み、荷崩れ、ラッシングの確認
  • 積み込み時の「迷ったら聞く」「不安なら報告」の習慣
  • 荷主とのトラブル防止のため、スマホで積載状況の記録を撮るのも有効

🪢 ロープの結び方は“現場の命綱”!何度でも練習を

ラッシングベルトが普及してきた現在でも、ロープを使った固定は今なお現場の基本技術のひとつです。

  • 荷台の形状や積み荷によってはロープのほうが適している場面も多く、
  • 急ブレーキや横風で荷物が動くか止まるかは結び方次第です。

👉 特に「南京縛り」「ひと結び+ひとまき」など、実践で使える結び方を何度も繰り返し練習することが大切です。

指導時のポイント

  • 「とりあえず結べた」ではなく、「ほどけない・緩まない・短時間で結べる」ことを基準に
  • ベテランの結び方を見て盗む → 自分の指に覚えさせるまで反復練習
  • 社内でロープ結びの練習会やコンテストを設けるのもおすすめ!

🔧 **“ロープを制する者が積載を制す”**と言われるほど、
この技術の有無は安全・信頼・プロ意識に直結します。
若手・新人にもしっかり伝えていきたい重要ポイントです。

まとめ

「積み方ひとつで、信頼を積むか、事故を招くかが決まる」
プロのトラックドライバーとして、“運ぶ技術”と同じくらい、“積む技術”にもこだわりを持ちましょう。

  • 積載バランス=走行安定性
  • 固定力=安全運転の土台
  • 配慮=荷主との信頼関係

積載の質が、安全と信頼を左右する。