「あとちょっとだけなら…」という気の緩みが、
トラック運送では大きな事故や法令違反に直結します。
過積載は“走る凶器”を生む行為であり、ドライバー・荷主・会社すべてに重大なリスクをもたらします。
この記事では、過積載の危険性と指導・管理のポイントをわかりやすく解説します。
✅ この記事でわかること
- 過積載がもたらす5つの危険
- 法令と罰則の内容
- 実際の事故例
- ドライバーが注意すべきポイント
- 指導で伝えるべき実務的な対策
⚠️ 過積載が引き起こす主な危険性
▶ ① 制動距離が伸びて止まらない
- 車両重量が重くなると、ブレーキの効きが甘くなり、止まるまでの距離が大幅に伸びる
- 特に下り坂ではフェード現象(ブレーキが効かなくなる)が起きやすくなります
▶ ② ハンドリング性能が低下
- ハンドル操作に対する反応が鈍くなり、急カーブや回避行動が困難に
- タイヤやサスペンションの負荷が増し、破損やバーストのリスクも上昇
▶ ③ 車両の損耗が急加速
- 過積載はフレーム・足回り・ブレーキ・エンジンなど車両全体に負担をかけ、
故障や修理の頻度が上がる
▶ ④ 法令違反による罰則・行政処分
- 道路交通法・道路運送車両法違反
- ドライバー・事業者の両方に罰則(減点・反則金・営業停止)
過積載の程度 |
罰則内容 |
10~20%超過 |
2点減点/反則金35,000円(大型) |
20%以上 |
6点減点+即免停/罰金刑の可能性あり |
常習違反 |
運送会社への営業停止命令・許可取消も |
▶ ⑤ 倫理的責任・社会的信用の喪失
- 万が一事故を起こした場合、「過積載だったかどうか」は厳しく調査されます
- 荷主からの契約解除・社会的な批判・報道など、企業存続の危機にも発展
🛣️ 過積載は“道路インフラ”にもダメージを与える
過積載による影響は、ドライバーや車両だけにとどまりません。
道路や橋梁といった社会インフラにも深刻なダメージを与えています。
✅ なぜ道路が傷むのか?
- トラックのような重量車両は、車両総重量がわずか1.2倍になるだけで、道路へのダメージは“倍以上”に増えると言われています。
- 特にアスファルト舗装は、想定された車重以上の荷重が繰り返しかかると、わだち掘れ・ひび割れ・陥没などが起きやすくなります。
✅ 橋や交差点でも危険が増す
- 橋梁は、設計荷重を超える車両が何度も通ることで、構造疲労やひび割れが進行しやすくなります。
- 特に交差点や信号前では、ブレーキ荷重+車重のダメージが集中するため、短期間で舗装が傷む原因に。
👉 道路の維持費は税金でまかなわれています。
つまり、過積載は「見えないところで、みんなの生活に迷惑をかけている行為」でもあるのです。
🚛 過積載は“今でも当たり前のように行われている”
法令で禁止されているにもかかわらず、
過積載は現在でも一部の運送現場では“常態化”しています。
- 「一度で運べば経費が浮く」
- 「荷主が多めに積めと言ってきた」
- 「見つからなければ問題ないと思っている」
といった経済的・慣習的な理由で、黙認・強要されるケースも少なくありません。
✅ 取り締まりは強化されているが…
- 国土交通省・警察などによる**過積載取り締まり(重量計測装置など)**は年々厳しくなっています。
- にもかかわらず、**「運ぶ側の意識が変わらない限り、繰り返される」**のが現状です。
👉 だからこそ現場では、
**「自分たちが“おかしいことをしている”という認識を持つこと」**が第一歩。
そして、それを止めるために、会社ぐるみで仕組みを整える努力が必要です。
🚨 実際にあった過積載事故の事例
事例①:山口県下関市・トラック横転事故(2022年)
- トラックが制限重量の1.3倍の荷物を積載して走行中、カーブでハンドルが効かず横転
- 積み荷が飛散し、通行中の車両に衝突 → 1名死亡・2名負傷
- 運送会社は行政処分+損害賠償数千万円
事例②:都内幹線道路・橋梁の破損
- 過積載車が橋を通行 → 構造部に損傷
- 修繕費用を運送会社が負担(1,200万円以上)
- 市民の通行に長期間の影響を及ぼす社会問題に
🧑🏫 指導時に伝えるべきポイント
🧑💼 過積載は“指導する側”の責任でもある
過積載は、ドライバーの判断だけでなく、
指示を出す側・運行を管理する側の責任が非常に大きい問題です。
✅ 配車・運行管理・経営者の責任
- 配車係が「もう1回で運べ」と無理な指示を出した
- 運行管理者が積載量を確認せず出発を許可した
- 会社として「暗黙の了解」で荷主からの要求を受け入れていた
こうした体制や雰囲気があると、ドライバーは**「逆らえない」「言い出せない」環境**に置かれます。
✅ 法的にも管理者が問われる
- 過積載による事故や摘発があった場合、
運行管理者や事業者(会社)も道路交通法・道路運送法などで処分対象になります。
| 例: | 運行管理者が積載量を把握せずに出発許可を出す → 行政処分(指導・営業停止など) |
👉 過積載をなくすためには、
「ドライバーの判断」に任せるのではなく、会社として止める体制づくりが必要です。
- 配車前に積載量をチェックする仕組み
- 荷主と無理のない契約条件を結ぶ
- ドライバーが「多いです」と言える空気をつくる
✅ 「積み過ぎない」が最初の安全運転
- たとえ現場で積むよう言われても、違法な積載は拒否する勇気が必要
- ドライバーが「ちょっとくらい…」で済ませてしまうと、事故や処分で取り返しがつかなくなります
✅ 積載量は“最大積載量”ではなく“状況”で決める
- 最大積載量ギリギリでも、坂道・雨天・長距離運行では余裕を持たせるべき
- 例:高速道路で長距離運行するなら80~90%が現実的ライン
✅ 荷主・配車係・運行管理者との連携
- 荷主に言われたからといって違法な積載を受け入れない
- 指示が不明確な場合は、運行管理者にすぐ相談・報告
✅ まとめ
過積載は、わかっていてもつい起きやすい。
だからこそ、日々の教育・声かけ・運行計画が重要です。
- 「このくらいなら」ではなく「安全かどうか」で判断すること
- 一人で悩まず、相談できる環境を作ること
- 積める量ではなく、“安全に運べる量”を意識すること
「あと少し」よりも「無事故で帰る」
それがプロとしての責任であり、会社の未来を守る行動です。