たびたび問題となっているトラックの過積載問題。
過積載がなぜまずいのか?といえば、なんといっても重大事故につながるリスクが急激に高まります。
たとえば積載率を超えたトラックは重心が高くなり、タイヤの編摩耗や制動距離が伸びることによって横転のリスクが出てきたり、追突などの衝撃も各段に大きくなるので被害も大きくなりますよね。
車両に対するダメージ以外にも、道路の老朽化によって、道路に対して大きな負担がかかり、道路損傷の原因になります。
過去に起きた過積載による重大事故でいうと、2018年9月に千葉県で発生した大型トラックの横転事故では、最大積載量29トンのところ、37トンの鉄くずを積載し、左折しようとして横転、死亡者3名を出す重大事故になりました。
もしそのような事故が起きれば、ドライバー本人も逮捕され、刑事・民事ともに厳しい処分が下ることとなります。
こうした重大事故を防止するため、トラック運送業界では過積載に対する注意喚起が以前から行われてますよね。
とくに過積載については荷主に対しての注意喚起も行われ、最近では過積載をしている運送会社も少なくなりましたが、個人的には食品関係の物流はまだ若干過積載が多いような印象を受けます。
過積載については罰則も非常に大きくなる可能性があるため、注意深く指導していかなければなりません。
なぜ過積載が起きるのか?
ひとつには、荷主が過積載に対する意識が薄い場合があります。
たとえば「最大積載量」への誤解もあり、「4トントラックだから4トン積める」というような感覚の荷主も存在します。
最近では荷主への罰則が発生することが知られるようになり、ほとんどの荷主が過積載に対する理解を持っていますが、個人的には食品関係の運送についてはまだ荷主への理解が完全ではないような印象を受けます。
また、やはり運送事業者側のコンプライアンス意識が低いケースだとどうしようもありません。
「積めるだけ積んでしまおう!」
といった指示は先に挙げた重大事故や車両故障に繋がりますので、絶対にやめましょう。
トラックの積載量を確認するには
トラックが詰める積載量は車検証に記載されている最大積載量を確認すると良いでしょう。
基本的には
「車両総重量=車両本体の重さ+乗車定員×55kg+最大積載量」
という計算式になっているため、車検証の「乗車定員」「最大積載量」「車両重量」「車両総重量」
の項目で計算してみると上記の計算式にピッタリと合います。
「車両重量」に関しては、架装部分も含まれるため、平ボディやアルミバン、冷凍・冷蔵装置の有無等で変わってきます。
つまり、架装重量が大きいほど最大積載量が少なくなりますよね。
荷主勧告制度とは?
過積載による荷主への勧告については、貨物事業法でも定められています。
貨物自動車運送事業法
第64条(荷主への勧告)
国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者もしくは特定貨物自動車運送事業者が第17条(輸送の安全)の規定に違反したことにより第23条(輸送の安全確保の命令)に該当したことにより第33条(許可の取り消し等)の処分をする場合において、当該命令または処分に係る違反行為が荷主の指示に基づき行われたことが明らかであるとき、その他当該違反行為が主として荷主の行為に起因するものであると認められ、かつ、当該一般貨物自動車運送事業者等に対する命令または処分のみによっては当該違反行為の再発を防止することが困難であると認められるときは、当該荷主に対しても、当該違反行為の再発の防止を図るため適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
ここでいう荷主には、メーカー等の一般企業はもちろんのこと、利用運送事業者も含まれます。
貨物事業者に対して積載量を超えた荷の配送を指示すると、貨物事業者のみならず当然荷主にも勧告が必要となりますよね。
過積載に対する荷主への措置としては、道路交通法によって罰則が科せられる可能性があります。
過積載に対する荷主への罰則は?
道路交通法では、警察署長から過積載の「再発防止命令」が出されます。
道路交通法
第58条の5(過積載車両の運転の要求等の禁止)
第75条1項に規定する使用者等以外の者は、次に掲げる行為をしてはならない。
①車両の運転者に対し、過積載をして車両を運転することを要求すること。
②車両の運転者に対し、当該車両への積載が過積載となることの情を知りながら、第57条第1項の制限に係る重量を超える積載物を当該車両に積載をさせるため売り渡し、または当該積載物を引き渡すこと。
2.警察署長は、前項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が反復して同項の規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、当該行為をした者に対し、同項の規定に違反する行為をしてはならない旨を命ずることができる。
この警察署長からの再発防止命令に違反した場合、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられることがあります。
また、貨物事業法においても荷主に対する措置が定められており、貨物事業者に対して過積載の処分を行う場合には、荷主に対しても過積載再発防止のための協力要請書、通称イエローカードが出されます。
このイエローカードが過去3年間に2回出された場合には、さらに警告書(レッドカード)が出されることとなります。
この警告書には
①最大積載量のところどれくらいの積載をしたか
②違反があった日時
③積載品目
等の内容が書かれ、報道機関等を通じて公表する可能性がある旨や、再発防止を図るための措置等の警告がなされます。
過積載が発覚した場合の運送事業者への罰則は?
過積載をおこなった場合の運送事業者への罰則は、次のとおりです。
過積載運送の引き受け、指示等 | 初違反 | 再違反 |
① 過積載の程度が5割未満 | 10日車×違反車両数 | 20日車×違反車両数 |
② 過積載の程度が5割以上10割未満 | 20日車×違反車両数 | 40日車×違反車両数 |
③ 過積載の程度が10割以上 | 30日車×違反車両数 | 60日車×違反車両数 |
過積載による運送を前提とした運行計画の作成 | 10日車 | 20日車 |
過積載による運送の指示 | 20日車 | 40日車 |
過積載運送防止の指導、監督の怠慢 | 10日車 | 20日車 |
違反車両の台数等によっていくらでも罰則が重くなるところに恐ろしさがあります。
悪質な場合には、運行管理者資格の取り消しや、事業許可の取り消しなど、経営自体が行えなくなる危険性が出てきます。
さらに実際に過積載をおこなっていなくても、過積載を防止するための監督指導を怠ったというだけで違反となる可能性があります。
ですから定期的に安全12項目である過積載や、積載方法についての教育を行うとともに、日常的に管理者が積載状況を把握しなければなりません。
また、道路交通法によってドライバーに対しても最悪の場合は免許停止や10万円以下の罰金、6か月以下の懲役といった取り返しのつかない事態にもなりかねませんので、とにかく過積載をしないことが身を守ることに繋がります。
荷主や貨物事業者の過積載に関するまとめ
過積載運行はなんといっても事故が起きやすくなるとともに、被害が甚大になるリスクが高まる認識を持つことでしょう。
さらに過積載をおこなうことの弊害は、車両や道路えのダメージ、エンジン高回転による環境や騒音の問題、
そして法令違反によるドライバー、貨物事業者、荷主に対する厳しい罰則と、全員が対策をしていかなければなりません。
過積載を防止するために荷主側の発注はもちろん、管理者が運行計画をしっかり立て、現場に出てトラックの積載状況を確認したり、定期的に教育指導を行うなど、厳重な体制をとって運営することが必要です。
また同時に、トラックの積載方法についても同時に確認しておくべきでしょう。
たとえば平ボディのトラックに荷を積載したがロープの括りが悪く、風によって荷が散乱、対向車に激突する事故であったり、
箱車の扉がしっかり閉まっておらずに荷が脱落、後続のベンツを損傷させる等々、私が見てきた中でも荷の脱落事故は意外と多いです。
もしこれらが過積載車両であればさらに大きな被害になることは想像できますよね。
貨物事業を行っていくうえで最低限守りたいことのひとつである過積載、絶対にないよう気を付けましょう。