運送業において付きまとう悩みのタネの一つである交通事故ですが、
事故が起きると会社側としても大ダメージを負います。
事故をあまり起こさないドライバーの方も多いですが、そんななかで
とくに事故を頻繁に起こすドライバーがいることがあります。
このうち特定の事故を起こしたドライバーは
「事故惹起運転者」と呼ばれますが、
そうした事故惹起運転者は法定で次の事故を起こした場合、「事故惹起運転者」に該当することとなります。
- 死亡または重症事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に交通事故を起こしたことがない者
- 軽傷事故をおこし、かつ、当該事故前の3年間に交通事故を起こしたことがある者
- 死亡または重症事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に事故を起こした者
要するに、
①死亡または重症事故を起こした運転者。
②軽傷事故を起こし、その事故の過去3年間にもなんらかの交通事故を起こした運転者。
は、「事故惹起運転者」に該当します。
では事故惹起運転者に該当した場合、なにをどうすれば良いのか?というと、大まかには
①「特定診断」を受診する
②「事故惹起運転者教育」を行う
の2つを実施しなければなりません。
特定診断の受診
おもに自動車事故対策機構(NASVA)が行っている事故惹起運転者向けの適性診断で、
「特定診断Ⅰ」と「特定診断Ⅱ」の2種類があります。
どちらを受けるかは、事故惹起運転者としてどの項目に該当するかで決まります。
該当する事故惹起運転者 | 受診する特定診断 |
死亡または重症事故をおこし、かつ、その事故前1年間に事故をひき起こしたことがない者 | 特定診断Ⅰ |
軽傷事故をおこし、かつ、その事故前3年間に事故をひき起こしたことがある者 | 特定診断Ⅰ |
死亡または重症事故をおこし、かつ、その事故前1年間に事故をひき起こした者 | 特定診断Ⅱ |
自動車事故対策機構(NASVA)で上記の特定診断を受診する場合、
特定診断Ⅰは約2時間実施、手数料9,100円に対し、
特定診断Ⅱは約5時間実施、手数料29,300円と、
特定診断Ⅱのほうがみっちりと診断を行うこととなります。
事故惹起運転者に対する特別な指導
指導内容 | 時間 |
①トラックの運行の安全の確保に関する法令等 トラックの運行の安全を確保するために貨物自動車運送事業法その他の法令等に基づき運転者が遵守すべき事項を再確認させる。 |
①~⑤までについて合計6時間以上実施し、
⑥については可能な限り実施する。 |
②交通事故の事例の分析に基づく再発防止対策 交通事故の実例の分析を行い、その要因となった運転行動上の問題点を把握させるとともに、事故の再発を防止するために必要な事項を理解させる。 |
|
③交通事故に関わる運転者の生理的および心理的要因およびこれらへの対処方法 交通事故を引き起こすおそれのある運転者の生理的および心理的要因を理解させるとともに、これらの要因が事故につながらないようにするための対処方法を指導する。 |
|
④交通事故を防止するために留意すべき事項 貨物自動車運送事業者の事業の態様および運転者の乗務の状況等に応じてトラックの運転の安全を確保するために留意すべき事項を指導する。 |
|
⑤危険の予測および回避 危険予知訓練の手法等を用いて、道路および交通の状況に応じて交通事故につながるおそれのある危険を予測させ、それらを回避するための運転方法等を運転者が自ら考えるよう指導する。 |
|
⑥安全運転の実技 実際にトラックを運転させ、道路および交通の状況に応じた安全な運転方法を添乗等により指導する。 |
この特別な指導教育を行う時期は、
事故惹起者が、事故後再びトラックに乗務するまでに行うことが原則ですが、
やむを得ない事情がある場合は再度トラックに乗務したのち「1か月以内に実施」しなければなりません。
この事故惹起運転者の教育記録についても、
記録簿を作成し3年間保存する必要があります。
記録簿に記載する内容は、
「実施年月日」
「実施した場所」
「実施者名」
「事故惹起運転者名」
「特定診断受診日と種類」
「指導教育内容」
等を記載します。
あらかじめ自社でのフォーマットを作成しておくとスムーズです。
事故惹起者を見分けるには?
個人的な経験では、事故を起こす人はほぼ特定の人に限られていて、なぜか毎年その特定の人が変わっていくこともありました。
もともと事故を起こしやすい性格は確かにあり、その場合は普段から注意深く対策することが必要になりますが、
今まで何も問題のなかったドライバーが事故を起こす前に何かしらの予兆があったりします。
たとえば、
・頻繁にタイヤを縁石等にこすった跡がある
・突然性格が変わる
といった具合で、後々になって、精神的な病気を発症していたり、実は手足の動きに影響のある病気にかかっていた等々、人間である以上、健康面の変化は必ず起きます。
つまり、普段優良なドライバーであっても、事故惹起者となる可能性は0ではないです。
体調面については健康診断だけに頼り切らず、普段から必ず点呼等でドライバーの様子を確認しましょう。
事故惹起者まとめ
輸送を事業の柱とする運送業者においては、
交通事故は日々つきまとうリスクになりますから、
事故惹起運転者に対する指導教育や特定診断はもちろんのこと、
ふだん、あまり事故を起こさないドライバーの方についても、
一般適性診断やKYTなどを定期的に行っていくことが健全な事業継続に結びついていきますので、
事故防止対策については積極的に取り組んでいくべきですよね。